Feuille64というMIDIパッドを作った

Feuille64というMIDIパッドを作りました.

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 少量だけですが8/28(土)の20時より販売開始します. 初期ロットだけの販売で2次販売はないかもしれません. というのも手持ちのMCUをすべてFeuille64に使ってしまうわけにはいかないので…(要望が大きければ考えます.)

 以下ページより購入可能です. もし在庫が切れていたら残念ながらご縁がなかったということで…ごめんなさい. もし在庫が残っていたら買ってください.

yynmt.booth.pm


なに?

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オモテ ウラ

 前述の通りMIDIパッドです. 自作キーボードを元に設計しているため実質自作キーボードです. キーレイアウトは見ての通り8x8の64キーOrtholinear配列で, 上部に4つのタクトスイッチと3つのロータリーエンコーダを搭載しています. 自作キーボードなのでファームウェアにはQMKを採用し, MCUも例のごとくATmega32U4を採用しています. そしていつも通りKailhソケットを採用しているので後からキースイッチの交換が可能です. ほぼすべての主要部品が実装済みのためハンダ付け箇所もかなり少なくなっています.


どうして

 当初は3araht(@3araht)さんのgiabalanaiを模したクロマチックアコーディオンのようなものを設計しようとしていました. ただ実際に設計し始めてみると想像以上にサイズが大きく左右分割の200%キーボードのようなものになってしまっていました. 文字を入力するキーボードと異なり楽器として機能するキーボードはどうしてもサイズが大きくなってしまうようです. 自分のやりたいことから少し逸れているような気がしたため大きく方針転換しました.

 方針転換した結果8x8のレイアウトにタクトスイッチとロータリーエンコーダを加えた構成になりました. いつかどこかで詳しく語るか書くかしたいんですがAcperienceと名の付くキーボード以外はすべて試作であり習作です. Feuille64で自分のやりたいことを書き始めると長くなるので割愛しますが,とにかくシンプルに説明すると

「ATmega32U4でちょっと試したいことがあるから練習してみるわ」

みたいな感じです.

 加えて,瀬戸弘司さんが以下の動画でIsomorphic Keyboardについての解説されておりとても参考になりました. Isomorphic Keyboardについての解説は3:53​~あたりです. パッドマスターへの道!の#4はまだなのかな…

www.youtube.com

 勉強のためにLaunchPad mini MK3を買った話だったり,フィンガードラムやってみたいよねって話だったり,実は実家がピアノ教室だったんだよって話だったり, 書き始めると寄り道しすぎるのでこれらも割愛します.

 MIDIパッドなんてきっと既製品のほうが圧倒的に機能面も品質も優れていることは重々承知の上で, では「自作の優位性って何なんだろう?」と考えながら設計を進めていました.


あたらしいなにか

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 毎回新しいキーボードを設計する際は常に自分の中で挑戦的な要素を入れることにしています. せっかく時間とお金を使ってモノを作るのに同じことの繰り返しでは何も意味がありません. 挑戦的と言っても無謀なものではなく設計上の検証と言った意味合いが強いです. 今回のFeuille64で言うと以下の要素です.

ATmega32U4-MU

 型番末尾にMUが付いたQFNパッケージのものです. 型番末尾がAUのQFPパッケージとは異なり足が生えておらず手ハンダがやや難しいです. Acperience70で32U4-AUを,Acperience12で32U2-MUを試したので,次は32U4-MUだろうということで試してみました. パッケージが異なるだけなので特に設計上の差はありませんが実装面積が狭くなることはメリットしかありません.

セラロック

 あぷろ(@elfmimi)さんのShiroMicroに採用されているセラロックを使ってみました.

github.com

 通常ATmega32u4の外部クリスタルには12~22pFのコンデンサを配置する必要があります. セラロックにはそのコンデンサが内蔵されているため実装面積を狭くできます. 実装面積が狭くなることはメリットしかありません(2回目).

ロータリーエンコーダ

 今までキーボードを設計をする上で一度もロータリーエンコーダには触れてきませんでした. キーボードにクルクル回す操作って必要?という感じでした. しかしMIDIパッドなのできっとクルクル回す操作は何かしら必要になるはずです. それにクルクル回す部分が付いているとなんかそれっぽくなりそうなので搭載することにしました.

LED

 ロータリーエンコーダ同様にLEDもLEDテープぐらいにしか触れてきませんでした. 理由はとてもシンプルで,キーボードが光ることに対して機能的な意味やその価値を個人的に感じられなかったからです. それに加え,自作キーボードでよく採用されている矩形の穴にSK6812MINIをはめ,宙に浮かせた状態で実装する方法が好みではありませんでした.  しかしSK6812MINI-Eであればタブ付きで実装難易度もかなり低く熱でLEDを破損する可能性も最小限に抑えられます. そして何よりMIDIパッドの光は機能的だしそこには大きな意味があります. LEDを搭載しないという選択肢はなくなり,全キーバックライトでガンガン光らせることになりました.

他はAcperience12までの設計をほぼ踏襲しています.


どぅびさん

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 設計が一段落してきた頃,所謂シャドーボックスのようなことをPCBでやることを思いつきました. 当初は黒レジストと赤レジストのPCB2枚で簡単な幾何学模様を描いてテストする方向で検討していました.

 しかしながら人間,欲が出てきます. 破壊的な衝動を伴う創作意欲. おそらくそのまま設計を進めていれば2ヶ月は早く完成していたでしょうし, 面白みのないものができあがっていたでしょうし, そしてそれをモヤモヤしながら世に出していたでしょう. すべて自分の思い通りに作れるのなら何も躊躇うことはないわけです.

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 欲の結果がPCBを4枚重ねた構造のこの作品でした. 上から順に0.8mm,1.0mm,1.0mm,1.6mmのPCBを重ねています. 当初PCBは3枚で構成されていて,肌の部分を赤レジストに白シルクで表現していました. しかしベタシルクはムラが発生することが多いです. 赤レジスト部分が立体的になるという利点もあることから, 最終的には仕上がりの美しさを考慮しこの構成に落ち着きました.

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 イラストを制作していただいたどぅび(@ksdb2)さんには単純に1枚のイラストを依頼したわけではありません. PCBという素材の表現の可能性を引き出すところからご協力いただいています. シルクやレジストマスク,銅箔抜きによって表現できる色数の制限や,各PCBへのレイヤ分けなどもすべて考慮した上で4枚のイラストを仕上げてくださっています. PCBという素材の限界,製造する上での制約,俺がやりたいこと,多くの注文をうまくまとめてくれました. そんなデザイナとしてプロフェッショナルなどぅびさんの作品はBoothで購入可能です. 素晴らしいので是非買ってください.

ksdb.booth.pm


 とまぁ…雑に書いてしまいましたがFeuille64を作った話でした. 「作った」と過去形ですがもう少しファームウェアに修正したい部分があるのでもう少し作ります. 次は40%ぐらいの小型のキーボードを作りながらAcperience70 spec_02を作っていきます.

この記事はAcperience70で書きました.